2013年11月3日
深煎り苦甘

表参道の交差点。午前中、風に漂うコーヒーの香りに、周囲を見回す人が多い。
その店、『大坊珈琲店』は、ホテルモントレ赤坂がある青山通り沿いの2階にある。
秋のきまぐれで一人、珈琲を飲んでみた。
「深煎りで苦甘(にがあま)」が持ち味。ブレンドは5種類。メニューには豆の量(=珈琲の濃さ)、お湯の量、価格の順で書かれていて、番号で注文をする。
1 30g 100cc 700
2 25g 100cc 650
3 20g 100cc 600
4 25g 50cc 700
5 15g 150cc 600
深い濃い味を求めて1番を注文。
店主の大坊勝次さんが丁寧にコーヒーを入れる。手にした銀色のポットをほとんど動かさず、そこから注がれるお湯の筋が、ネルフィルターに吸い込まれていく。ジャズが流れる中、言葉はない。当然私の視線もそこに集まる。まるで指揮者のよう。
作品であるコーヒーは、すぐに飲めるようにと、熱すぎない温度で出される。
棚に並ぶ本は、コーヒーを焙煎した煙で変色している。海外のハードボイルドや池波正太郎、司馬遼太郎などだ。壁には、画家・牧野邦夫がこの店の中を描いた油絵が飾られている。煎った豆を冷ますためのザルなど、美しい道具たちを眺めるのも、楽しい。店の中のどこを切り取っても絵になる「スタイル」がある。
当然ファンも多いこちらの隠れた有名店は残念ながらビルの取り壊しのため、年内で38年の歴史に幕を閉じるとのこと・・・。
お店には黒電話がおかれており店主はそれを普通に使用する。電話が終わるタイミングを見計らいお会計をしにいった。
最後にこのブログ用にお店が長続きをした理由を尋ねると・・・
「少数のお客様が受け入れてくれて、その少数が増えてきた。幸運に思います。」
店主の言葉が一番深かった。
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ホテルモントレ赤坂
フロント 佐藤
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