山王美術館

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開催中の展覧会

2024春「印象派展」

山王美術館 開館15周年記念


コレクションでつづる 
印象派展

会期
2024年31日(金)~ 729日(月)
休館日
火曜日・水曜日(ただし、3/20は開館いたします)
開館時間
10:00~17:00(入館は16:30まで)
会場
4階展示室
入館料
一般       1,300円
大学生・高校生  800円
中学生以下    500円
*中学生以下、保護者同伴に限り2名様まで無料
お知らせ
*山王美術館は日時指定予約制ではありませんが、展示室が混雑し、一定の人数をこえた場合には、入場制限をさせていただく場合がございます。ご理解、ご協力の程お願い申しあげます。

山王美術館は、2024年8月に開館15周年を迎えます。
15周年を記念して「山王美術館コレクションでつづる 印象派展」を開催いたします。

19世紀末のパリは産業革命を背景に急速に近代都市へと発展を遂げます。一方、絵画界においては、神話や聖書を題材とする「歴史画(物語画)」を優位とし、伝統的な技法を遵守するアカデミスム絵画がいまだ主流であり、サロン(官展)への入選が唯一作品発表の場でした。
こうした時代にあらわれたのがのちに「印象派(印象主義者)」と称される画家のグループです。モネ、ルノワールらを中心とする画家たちは、クールベやマネによる写実主義を継承しながらも、アカデミックな価値観にとらわれない、新たな絵画表現をめざしました。光のもとで制作することを重視した彼らは、絵具を混色せずに並置する「筆触分割」という新たな技法を生み出します。印象派の画家たちは、明るさを失うことなく戸外の光を表現することを可能とした技法を用い、自らが生きる同時代の風俗を主題とすることで、ルネサンス以来の西洋絵画における色彩の観念を根底から覆す革新的な絵画を生み出したのです。1874年には、画家たちだけの手によるグループ展を開催しますが、「印象派」の名称は、この第一回展に出品されたモネ作≪印象、日の出≫に由来します。最後となった第八回の印象派展には、シニャック、ゴーガン、ルドンなども出品しており、印象派の影響のもと、より新たな絵画の流れが形成されることとなりました。

本展では、印象派の先駆者ともいえるコロー、ミレー、クールベから、印象派における中心的な存在として活躍したモネ、ルノワール、ドガ、シスレーらのコレクション作品を展示いたします。

ポール・ゴーガン《カイユ工場とグルネル河岸》1875年、山王美術館蔵
ポール・ゴーガン《カイユ工場とグルネル河岸》1875年、山王美術館蔵
 【みどころ】 

ポイント
印象派を中心に「フランス絵画の革新者たち」による絵画で構成
 

19世紀後半、フランス絵画は大きな変革をむかえ、古典的な規範にもとづくアカデミスム絵画の価値観とはことなる新たな絵画が生れました。三章で構成する本展では、コレクションの中より、印象派の先駆者ともいえるバルビゾン派のコロー・ミレー、レアリスム代表するクールベから、印象派の中心的存在として活躍したシスレー、モネ、ルノワール、ドガ、さらに印象派以後の絵画の潮流を形成したルドン、ゴーガンらの絵画約30点を展示いたします。



ポイント
新コレクション10点を初展示!

近年収蔵した、ミレー1点、クールベ1点、シスレー3点、ドガ3点、ゴーガン1点、ルドン1点の絵画を本展にて初公開いたします。

【close-up】
このうち、≪カイユ工場とグルネル河岸≫(1875年)は、ゴーガン27歳の作品です。パリで株式仲買人として働き成功を収めていたゴーガンですが、名付け親の娘が画家であったことから、油彩画を学び始め、1876年にはサロンに出品した風景画が入選しました。ピサロを介して印象派に惹かれ、その画風を学ぶのは1877年以降のため、本作は画家として専心する以前の、ゴーガン初期の画風を知ることのできる希少な作例だといえます。


ポイント
「ここでしか会えない芸術作品」 

山王美術館では、2009年のオープン以来、コレクションのみによる展覧会を開催してきました。本展で展示する作品の何れもが、「ここでしか会えない芸術作品」です。本展を通じて、山王美術館コレクションの新たな魅力に触れていただければ幸いです。
ジャン=フランソワ・ミレー《鶏に餌をやる女》1851-1853年、山王美術館蔵
ジャン=フランソワ・ミレー《鶏に餌をやる女》1851-1853年、山王美術館蔵
ジャン=バティスト=カミーユ・コロー《湖畔の大きな樹木(ヴィル・ダヴレー)》1870年頃、山王美術館蔵
ジャン=バティスト=カミーユ・コロー《湖畔の大きな樹木(ヴィル・ダヴレー)》1870年頃、山王美術館蔵
ギュスターヴ・クールベ《オルナン地方の滝》1866年頃、山王美術館
ギュスターヴ・クールベ《オルナン地方の滝》1866年頃、山王美術館
【第一章】印象派の先駆者たち

 19世紀のフランスは目まぐるしく政治体制が入れ替わり、さらに急速な産業革命が進む中、富裕な市民階級が権力者として台頭してきます。こうした時代において、レアリスム、バルビゾン派など、従来とは異なる芸術が誕生しました。彼らはアカデミーが推進する既存の美術制度や古典的な絵画の規範・価値観を越え、自由で新しい絵画の在り方を模索し、理想化された世界ではなく、あるがままの現実を主題とする芸術を目指したのです。レアリスムを代表する画家の一人がクールベです。身近な農民や労働者層を主題とした大型画面による作品をつぎつぎに発表。1855年のパリ万国博覧会に際しては「レアリスム宣言」を提唱し、サロン中心の在り方に疑義をとなえるとともに、自身の芸術と思想を世に問いました。一方、コローやミレーらバルビゾン派の画家たちは、戸外でのスケッチ、徹底した自然観察という作画姿勢により風景画の在り方そのものを大きく変革させていきました。

クールベ、コロー、ミレーらにより印象派への道が大きく拓かれ、さらなる絵画の革新が推進されることとなったのです。
アルフレッド・シスレー《登り道》1875年、山王美術館蔵
アルフレッド・シスレー《登り道》1875年、山王美術館蔵
アルフレッド・シスレー《サン=マメスのマロニエの木》1880年、山王美術館蔵
アルフレッド・シスレー《サン=マメスのマロニエの木》1880年、山王美術館蔵
クロード・モネ《オシュデ家の四人の子どもたち》1880年代初頭、山王美術館蔵
クロード・モネ《オシュデ家の四人の子どもたち》1880年代初頭、山王美術館蔵
【第二章】印象派の画家たち

形成期の印象派の画家たちにとって、指導者的存在ともいえる画家マネ。バティニョール地区のカフェ・ゲルボワには、マネを中心に芸術家が集まり始め、そこにはモネやルノワールの姿もありました。しかしながら、彼らの新しい傾向の作品は、アカデミスムの規範から外れるとして、サロンでの入選を果たすことがむずかしい状況でした。やがて作品発表の機会もかなわず旧来のサロン審査の制度に限界を感じた画家たちにより、自らの手による展覧会が計画されるのです。
1874年4月15日、モネ、ルノワール、シスレー、ドガら30人の画家は最初のグループ展を開催。近代都市に生きる人々や同時代の風俗を主題に、「筆触分割」の技法を用いた新たな絵画表現による作品を発表。印象派の画家たちにより、西洋絵画における主題や技法上の革新がなされました。しかしながら、伝統的な絵画技法から逸脱した彼らの絵画はあまりにも革新的、前衛的すぎると、多くの批評家や観衆から攻撃的に批判・酷評されました。当時の美術界においては、筆触を残した技法は「未完成」「下描き」と見なされたのです。
ピエール=オーギュスト・ルノワール《若い女性》1877年、山王美術館蔵
ピエール=オーギュスト・ルノワール《若い女性》1877年、山王美術館蔵
ピエール=オーギュスト・ルノワール《読書(赤とローズのブラウスを着た二人の女性》1918年、山王美術館蔵
ピエール=オーギュスト・ルノワール《読書(赤とローズのブラウスを着た二人の女性》1918年、山王美術館蔵
エドガー・ドガ《入浴のあと》1892年、山王美術館
エドガー・ドガ《入浴のあと》1892年、山王美術館
 
オディロン・ルドン《アポロンの二輪車と大蛇》1905年、山王美術館蔵
オディロン・ルドン《アポロンの二輪車と大蛇》1905年、山王美術館蔵
ポール・ゴーガン《カイユ工場とグルネル河岸》1875年、山王美術館蔵
ポール・ゴーガン《カイユ工場とグルネル河岸》1875年、山王美術館蔵

【第三章】印象派を越えて

印象派のグループによる展覧会は、1874年から1886年にかけて、計8回にわたって開催されました。彼らは非難や嘲笑を受けながらも自らの絵画表現を探究していきますが、やがてグループの中心的な存在であったルノワールやモネらが印象派から距離をおくようになり、1878年以降には経済的な理由もありサロンへと復帰します。さらに、グループ内の対立も目立ちはじめ、グループ展としての存在意義も薄れていきました。最後となった第八回展には、もはやルノワールやモネらは参加しておらず、その一方でスーラ、シニャック、ルドン、ゴーガンらが出品しています。印象主義の技法を科学的に徹底し点描技法へと発展させたスーラやシニャック。印象主義への批判的姿勢から総合主義を確立したゴーガン、象徴主義へといたったルドン。のちにポスト印象派と称される彼らは、印象主義を継承しつつも発展的または批判的に乗り越えようと試みたのです。
印象派の画家たちによる絵画の革新は、より新たな探求を生み出しました。彼らにより開かれた絵画表現への扉により、フォーヴィスム、キュビスム、さらにエコール・ド・パリと、さまざまな主義や美学のもと、20世紀以降のフランス絵画は実り豊かに展開していくこととなったのです。

幸野楳嶺《断崖観瀑図》山王美術館蔵
幸野楳嶺《断崖観瀑図》山王美術館蔵
上村松園《美人納涼図》1924年頃、山王美術館蔵
上村松園《美人納涼図》1924年頃、山王美術館蔵

 【5F 常設展】 
「印象派展」によせて 日本画コレクション 

4階展示室にて開催する「山王美術館コレクションでつづる 印象派展」に連動して、5階展示室ではコレクションの中より日本画の作品を中心にご紹介いたします。
西洋絵画における革新を促した印象派の画家たちに大きな影響を与えたのが日本美術でした。19世紀後半のフランスでは、ジャポニスムが流行。浮世絵版画に深い関心を寄せたモネ、ドガらは積極的に蒐集し、浮世絵を通じて見出した日本美術の特徴に刺激をうけ自らの絵画表現へと取り入れていきました。
本展では、日本の自然観照に根ざした風景画・花鳥画を描いた幸野楳嶺・川合玉堂・上村松篁・上村淳之、伝統をふまえながらも独自の美人画へといたった上村松園・伊東深水、新たな潮流のなか古典絵画の精神を研究した小林古径・前田青邨らとともに、印象派の技法を思わせる堂本印象・杉山寧・東山魁夷らの日本画を展覧いたします。

黒田清輝《夏木立》1894年、山王美術館蔵
黒田清輝《夏木立》1894年、山王美術館蔵
安井曽太郎《横たわる裸婦》1912年、山王美術館蔵
安井曽太郎《横たわる裸婦》1912年、山王美術館蔵
佐伯祐三《自画像》1917年頃、山王美術館蔵
佐伯祐三《自画像》1917年頃、山王美術館蔵

 【3F 常設展】 
「印象派展」によせて 日本洋画コレクション 

4階展示室にて開催する「山王美術館コレクションでつづる 印象派展」によせて、3階展示室ではコレクションの中より洋画作品を中心にご紹介いたします。
欧化を推進する明治政府のもと西洋の美術・思想が本格的に流入し、19世紀後半以降には、直接西欧で絵画を学んだ画家たちや、『白樺』などの文芸雑誌を通じて、印象派・ポスト印象派がわが国にもたらされました。若い画家たちは、印象派の絵画を通じて芸術家自身の主観や個性の重要性を認識するとともに、表現や技法を積極的に試み自己の作品へと取り入れていきました。
本展では、外光派の黒田清輝、藤島武二、戸外制作を重視した金山平三、向井潤吉、荻須高徳、ドガに私淑した小磯良平、印象主義的な技法の影響がうかがえる佐伯祐三、安井曾太郎、さらに点描様式にいたった岡鹿之助らの絵画を中心に展覧いたします。