山王美術館

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板谷 波山 Itaya Hazan
1872-1963

茨城県下館に生まれ、東京にて没。
本名は嘉七。
号は故郷の山、筑波山にちなむ。
1889年東京美術学校(現・東京藝術大学)彫刻科に入学し、岡倉天心、高村光雲らの指導をうける。1894年に卒業後は予備校、中学校で彫刻・図画を教える。1896年石川県工業学校(現・石川県立工業高等学校)へ彫刻科の主任教諭として赴任。その後、彫刻科が廃止され陶磁科を担当。1908年の日本美術協会展への入賞以来、数々の賞を受賞。古代裂や能衣裳、更紗、アール・ヌーヴォー様式を研究し独自の文様へと応用するとともに、葆光彩磁をはじめとする釉技を創案、また在学時代に習得した彫刻技法を取り入れるなど独自の作風を示した。

板谷波山《葆光彩磁葡萄文香炉》、山王美術館蔵

葆光彩磁葡萄文香炉


高さ:8.0㎝, 奥行き:12.0㎝

Incense Burner with Under-glaze Design of Grape, Mat Glaze


h:8.0㎝, d:12.0㎝

板谷波山自らが名付けた独自の技法「葆光彩磁(ほこうさいじ)」による作品です。微妙な濃淡により表現された葡萄の果実を囲む、やわらかな色合いの唐草文様。いずれの色彩も従来の色絵には見られない、パステルカラーとも言うべき淡い色合い。マット調の釉薬の効果により、色彩は一層やわらかさをまし、朝靄ごしに浮かびあがるかのようです。さらに、白い素地を生かした文様の配置とすることで、端正な器形と文様それぞれが際立つような印象を与えます。なお、葡萄文様は、奈良県・薬師寺の薬師如来の台座に施された葡萄唐草文様に範をえたものです。

板谷波山《蛋殻磁香炉》、山王美術館蔵

蛋殻磁香炉


高さ:11.0㎝ , 奥行き:12.0㎝

Incense Burner with Ears, White Porcelain


h:11.0㎝ , d:12.0㎝

波山独自の「蛋殻磁(たんかくじ)」は、乳白色のマット調の釉薬が厚くかかり、全面に貫入が細かく入ります。やわらかな赤みを帯びた貫入のひびは、焼成後の冷却段階で朱を塗り込み発色させることで得られる効果だといいます。1925年の工芸済々会の第一回展で新作として発表。以降、昭和期における波山のマット釉の中心は、それまでの葆光釉から蛋殻磁へと交替していくこととなりました。