山王美術館

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ジャン=フランソワ・ミレー Jean-François Millet
1814-1875

フランス ノルマンディーに生まれ、バルビゾンにて没。
1833年よりシェルヴールで、1837年からはパリで絵を学ぶが、アカデミックな教育になじめずルーヴル美術館にて巨匠たちの作品を独習する。1840年肖像画1点がサロンに初入選。数多くの肖像画を手掛けるとともに、神話画や裸体画を繊細でやわらかなタッチと明るい色彩で描いた。1849年にバルビゾンに移住し《種をまく人》をはじめ日々の労働に励む農民の姿を描いたが、1860年以降はしだいに人間中心の表現から風景画などの自然表現へと変化させていく。我が国へは明治のはじめ工部美術学校の設立に伴い来任したバルビゾン派の流れをくむ風景画家アントニオ・フォンタネージによって紹介され作品模写が行われた。

ジャン=フランソワ・ミレー《鶏に餌をやる女》1851-1853年、山王美術館蔵

鶏に餌をやる女

1851-1853年
黒クレヨン・パステル・グワッシュ、紙
41.9×31.1㎝

Woman Feeding Chickens

1851-1853
Crayon,pastel,gouache on paper
41.9×31.1㎝

農家の主婦が自宅の戸口の踏み段から、鶏たちに餌をやるという日常の一場面を描いたものです。画面の後方には、家庭の菜園を耕す農夫の姿も見えます。前掛けから取り出された餌をついばむ雌鶏たち。その様子を見守るように立つ雄鶏と、奥からかけよる二羽のすがたが対照的です。黒クレヨンを用いて入念に描き込まれた農婦を中心に、ぼかしによる陰影と白色のグワッシュと青色のパステルを用いたハイライトにより巧みに表現された本作は、油彩画のための下絵にとどまらない、独立した作品として描かれたものであるといえるでしょう。