山王美術館

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アンリ・ド・トゥールーズ=ロートレック Henri de Toulouse-Lautrec
1864-1901

フランス アルビに生まれ、マルロメにて没。
由緒あるフランス貴族のもとに生まれ乗馬や狩猟また素描に親しむ環境で過ごすが、1878年と1879年の二度におよぶ両足の骨折がもとで下半身の発育がとまる。その後、本格的に絵画の道へ進むことを志す。1882年にパリに出て、レオン・ボナついでフェルナン・コルモンの画塾でアカデミックな画風を学ぶ。エドガー・ドガや日本の浮世絵版画の影響のもと大胆な構図・画面構成を試み、1886年にモンマルトルに居を定めてからは、ダンス・ホールやキャバレーなど歓楽街の情景を鋭い観察力と的確なデッサン力により描きあげた。またピエール・ボナールのポスターに触発され、1891年に手がけたムーラン・ルージュの石版画ポスターが評判となり、パリで一躍有名となる。以降、多くのポスターを制作し、この分野を芸術の域にまで高めた。

アンリ・ド・トゥールーズ=ロートレック《タピエ嬢》1882年、山王美術館蔵

タピエ嬢

1882年
油彩、カンヴァス
64.6×44.0㎝

Miss Tapié

1882
Oil on canvas
64.6×44.0㎝

ロートレック、18歳の作品です。本作が描かれた1882年は、ボナのもとで本格的に絵画を学びはじめた年にあたります。モデルをつとめているのは、「タピエ嬢」という題から母方の親族の子どもなのでしょう。濃紺の肘掛椅子に背をあずける幼女は、ポーズをとる直前に遊んでいたのか左手に赤と黒の衣装を着た人形の足を握りしめています。指しゃぶりをするような自然な仕草とくつろいだ表情から、画家と親しい間柄であったことを思わせます。タピエ嬢の幼女らしいあどけない仕草と表情は、スナップ写真のように鋭敏な観察力で捉えられています。